令和5年度 TCカレッジシンポジウム開催報告

TCカレッジシンポジウム開催報告(2024年1月23日開催)


【開催概要】

 東京工業大学オープンファシリティセンター(OFC)TCカレッジは、令和6年1月22日〜1月26日に開催された研究基盤EXPO2024(主催:一般社団法人研究基盤協議会)の企画として、1月23日に「TCカレッジシンポジウム〜TC取得者の活躍と出口戦略の展望〜」を本協議会後援の下オンライン開催し、産学官から262名が参加しました。

 昨年度の同シンポジウムでは「オールジャパン型高度技術人財育成の取り組みの今と今後の展望」をテーマに、高度技術専門人財(テクニカルコンダクター、TC)の養成を目的としたTCカレッジの取り組み紹介を行いました。今年度は、令和4年度に初めて認定されたTCにフォーカスし、TC取得者、受講生、監修教員らによる2部構成の座談会により、それぞれ第1部では「TCを目指す意義と責任」、第2部では「TCの出口戦略を支える取り組み」について議論を行うことで、TCカレッジ受講生や関係者が持つ「TC取得、その先の疑問」をクリアにすることを目的としました。また、本シンポジウムは、マネジメント系TCコースの受講生が中心となって企画運営を行いました。

 

【オープニング】

 渡辺治OFCセンター長(理事・副学長)による開会挨拶に続き、江端新吾TCカレッジ長より「TC取得者の出口戦略の展望」について紹介を行いました。司会進行は柗見吉朗TCカレッジ事務局統括が務めました。

 左上:開会の挨拶をする渡辺OFCセンター長

 右上:江端TCカレッジ長

 左下:柗見TCカレッジ事務局統括

 

 

【座談会 第1部】

 ここでは髙濵謙太朗氏(マネジメント系TCコースTM1年目、東海国立大学機構)を座長として、髙田綾子氏(バイオ系TC取得者、東京工業大学)、河原夏江氏(遠隔分析DX系TCコースTM2年目、長岡技術科学大学)、下田周平氏(材料評価系TCコースTM1年目、北海道大学)、山田知沙氏(マネジメント系TCコースTM1年目、山口大学)により「TCを目指す意義と責任」について議論が交わされました。第1部コンセンサスとして下記の内容が提案されました。

・TCを取得した技術職員は、研究者の課題を解決するために不可欠なパートナー、さらには今後の研究支援や技術職員人財育成を担う中核的な存在となる。

・TCやTM認定者は、技術職員や技術支援人財の未来を担う存在である自覚を持つ。

・TCが高度技術専門人財であることを積極的にアピールしていく。

・優れた技術人財として、認知度に加え処遇面の制度設計も必要である。

・TCを研究チームに加えることで研究実現性が高まり、研究環境構築や資金獲得がしやすくなるなどの好事例と、それに基づく制度設計が必要である。

・オールジャパンでバックアップ体制を整える必要があり、国に対しても制度面等での適切なサポートなど積極的な政策提言をしていきたい。

 

第1部座談会 パネリスト

上段左:髙濵氏(座長) 上段右:髙田氏

中段左:河原氏     中段右:下田氏

下段左:山田氏

 

【座談会 第2部】

 ここでは本間貴之氏(マネジメント系TCコースTM1年目、京都大学)を座長として、進士忠彦教授(マイクロプロセス系TCコース監修教員、東京工業大学)、和地正明教授(バイオ系TCコース監修教員、東京工業大学)、松浦祥悟氏(マネジメント系TCコースTM2年目、鳥取大学)、江端新吾教授(マネジメント系TCコース監修教員、東京工業大学)により「TCの出口戦略を支える取り組み」について議論が交わされました。第2部コンセンサスとして下記の内容が提案されました。

・高度技術専門人財は、研究で必要なプロセスを俯瞰的に把握し、その動向に常に興味を持つことが重要であり、その育成は1大学ではなく各機関同士のネットワークを通して行うことが望ましい。

・TCカレッジが技術情報の集積所としての役割を持ち、オールジャパンで課題解決に取り組むネットワーク構築の中心となる必要がある。

・TCの社会的認知度向上に「〇〇士」のような対応する日本語名は有効的である。高度技術人財であることを積極的にアピールしていく。

・TC取得者の更なるキャリアアップの道筋として、博士課程への入学や民間企業と共同研究などができる仕組みを提案したい。

・研究をイノベーションまで牽引するキーパーソンとして、より厚めに人員を確保すべきである。

 

第2部座談会 パネリスト

上段左:本間氏(座長) 上段右:進士教授

中段左:和地教授    中段右:松浦氏

下段左:江端教授

 

【クロージング】

 文部科学省科学技術・学術政策局より、人材政策課人材政策推進室の高見暁子室長、同局研究環境課の稲田剛毅課長からそれぞれご講評をいただきました。高見室長からは「議論されたTC取得の意義や責任には現場感が強く感じられるとともに、研究支援者ではなく研究者のパートナーとなる存在であると感じた。多様な得意分野を持つTCが組織の壁を超えて英知を結集することで、これまで以上に多くの研究課題の解決に繋げられると確信している。また、それを支えるべく省内のワーキンググループにより、全国の技術職員の実態把握の調査を開始しており、政策提言へと繋げていく。」と強い期待をいただきました。稲田課長からは「TC誕生による各大学での利点は何か?を精査することで、第1期から段階的に質を高め、多くのフォロワーを惹きつけられるカレッジ運営を期待する。EXPOに関係する組織の垣根を超えた連携強化を期待する。」とのエールをいただきました。

 最後に閉会の挨拶として岩附信行OFC研究基盤戦略室長より、今後はTCの高い能力を積極的にアピールする場を創出し、後進の育成を継続することで我が国の研究レベルを上げていくとの意気込みを参加者に伝え、本シンポジウムを締めくくりました。

 

文部科学省の高見室長(左)と稲田課長(右)
岩附OFC研究基盤戦略室長